chaikaの開発を無期限停止します
chaika は,近くリリースする 1.8.0 をもって開発を無期限停止とします. より正確には,nodaguti は chaika の開発から手を引きます.
2013年からの短い期間でしたが,利用してくださった皆様,開発上のサポートしてくださった方々など, 多くの方に支えられて開発を継続することが出来ました. 本当にありがとうございました.
振り返ってみると,モチベーションの高い時と低い時の差が激しく, 頻繁にリリースしたかと思えば1年以上更新しない時期が続いたりする不安定な開発スタイルでした. また,テストを適当に済ませてしまうひどい癖のために,バグが混入することもしばしばでした.
ご迷惑をお掛けし申し訳ありませんでした.
理由
直接的かつ最大の理由は「XUL/XPCOMを廃止し,WebExtensions API へ移行することが発表されたこと」(下記記事参照)です.
chaika はここのところ,掲示板への対応(dat取得処理,datパース処理など)をプラグイン化するシステムを開発中でした. これは,2ch.net/bbspink.com からの締め出しを食らったことを受けて, あらゆる掲示板に対し,ユーザーがプラグインを追加するだけで対応できるようにするものです.
それまでは,コード中に 2ch.net/bbspink.com/2ch互換掲示板, したらば,まちBBS という 3種類の掲示板に向けた記述が直接記述(ハードコーディング)されており,難解なコードとなっていました.
これを一からリライトし,ついでに File IO を非同期に変えることで高速化も狙うというかなり大規模な開発を進めていたところでした. この大規模リファクタリングを実現するためには,約3万行ある chaika のコードをほとんどすべて書き換える必要があると見積もっていました.
しかし,最近 XUL/XPCOM が廃止されるというニュースが流れました. chaika は「旧来型」のアドオンであり,XUL/XPCOM によって作られています(Add-on SDK も使用していません).
WebExtensions API だけで chaika の機能が全て実現できるかどうかは,仕様が固まっていないためなんとも言えませんが, この「仕様変更」に対応するためには chaika のコードを全て書き直す必要があるということは確実です.
chaika は機能が多く,各機能や設定が複雑に絡み合っている上,歴史的な経緯による仕様も存在します. そのようなアドオンを,一からコードを書きなおして忠実に再現することは,私個人の手では極めて困難であろうとの結論に達しました. 技術力不足であるとの謗りは甘んじて受ける所存ですが,何卒ご了承ください.
今年2月に bbs2chreader/chaika Part45 にて
私としては flyson さんが 2004 年に開発を開始した時から 10 年以上も続いている歴史に終止符を打つことは現時点では考えておりません。
と発言してから1年もしないうちにこのような決定をしなければならないのは大変残念ですが, どうか事情をご理解いただければ幸いです.
chaika 1.8.0
現在の開発版に対し,e10s に対応するための最低限の変更を加えたものを 1.8.0 としてリリースする予定です.
元々は上でも書いたように大規模なリファクタリングを行っているところであったため, 新旧のコードが入り混じった非常に汚い状態でリリースしなければならないのがちょっとアレですが, リファクタリングを続ける気力がもうないので... (リファクタリングしても1年くらいで動かないコードになるため)
今後に向けて
今回のことは,chaika の開発引き継ぎや,コードの再利用などを禁止するものではありません. ライセンス(MPL 1.1/GPL 2.0/LGPL 2.1)に沿った利用であれば,なんら問題なく使用可能です.
私自身としては,bbs2chreader と chaika をあわせて8年ほど使っており, ブラウザと一体型の専用ブラウザの快適さからは抜け出せそうもありません. WebExtensions API の仕様が固まり,専用ブラウザが作れそうであるという判断に達すれば, なんらかのアドオンを作成したいと考えています.
サイバーエージェントとドワンゴのインターンシップに参加します
これは以下の記事の派生記事です.
運良くサイバーエージェントとドワンゴのインターンに参加させていただけることになったので,面接の体験談などを書きたいと思います.
サイバーエージェント
書類審査→1次面接→2次面接でした.9月いっぱいお世話になる予定です.
志望動機
申し込んだのは「弟子入り (テクノロジーコース)」です.インターンのサイトに「インフラコース」があったので,Yahoo! と同じ理由でインフラコースに参加する目的で応募しました.
1次面接
1次面接は人事の方が面接官でした.この時点で Microsoft, はてな, Yahoo! Japanに落ちたことが判明しており,選考に通ったものがなかったため,かなり落ち込んだ状態で面接に行ったのを覚えています.
事前の提出書類ではどのコースを選択するのか?というのは書かないのですが,自分の場合自己アピールにポートフォリオや Github のアカウントを書いたことで,完全にフロントエンドに応募する人だと思われたらしく,インフラ系のことがやりたいみたいな話をしたらかなり驚かれました.
結局,実務に関わる以上,インフラ素人を現場に放り込むわけにもいかないので,フロントエンドのサービス開発をしつつ,ミドルウェアのチューニングもちょこちょこ勉強してみる?みたいな話の流れになりました.フロントエンドで大規模開発もやってみたいし,インフラにも未経験だけど関わってみたい,みたいなめちゃくちゃなことを言っていたのをうまく誘導して話をまとめてくださり,面接官の方には非常に感謝しています.
その場で1次面接通過となり,2次面接の日程を聞かれました.
2次面接
2次面接はエンジニアの方2人との面接でした.どのようなことをやりたいのか?について技術的にさらに突っ込んだ話を訊かれました/しました.
どちらかというと選考というよりは,インターン生の学びたいことと,企業側が提供できる業務内容との確認・すり合わせ的な意味合いが強いように感じました.
Firefox のアドオン開発していて,JavaScript が好き,Twitter で情報収集しています,と話しただけで,じゃああの人とかこの人とかフォローしている感じでしょ?と一発で当てられてしまったのが印象に残っています.
備考
サイバーエージェントのインターン面接については様々な情報が流れており,「面接官のリア充オーラがすさまじかった.技術的なことは聞かれなかった」「面接官からの質問はほとんどなく、「時間を与えるから自分をプレゼンして」って感じ」などがありますが,自分の場合は:
- 面接官は普通の人だった.
- なぜこのインターンに参加しようと思ったのか,どんなことがやりたいのかについて特に重視している感じだった.
- ポートフォリオを事前に提出したのも影響しているのか,その内容をもとに技術的な詳細を聞かれた.
という感じで,参加するコースや面接官によってだいぶ面接内容が異なるようです.
ドワンゴ
書類審査→面接でした.10-12月でお世話になる予定です.
面接
実は,募集ページに「社内にて選考」とあったので面接があると思っておらず,面接を実施するとのメールが来た時は驚きました.日程連絡の電話でしどろもどろになってしまい,申し訳なかったです.
面接では,サイバーエージェントと同じく何をしたいか,どういうサービスに関わりたいか,およびポートフォリオの内容を踏まえて技術的なことについて聞かれる,という感じでした.
「ニコニコ動画に関わりたい」と話したところ,「じゃあどういうふうに改善したらいいと思う?」と訊かれ,ありきたりなことしか返せず,「それすでに検討したことある」と言われてしまったのが残念でした.「これからは新しいサービスを考案できるエンジニアがもっと必要になる」と話されていたのが印象的でした.
また,面接官の方に chaika のユーザーの方がいらっしゃったのでテンションが上がり,2ch に API が導入されたけど今後どうするつもりなの?みたいな話で盛り上がりました.実は chaika を実際に使ってくださっている方に直接お会いしたのは初めてのことで,本当に嬉しかったです.
chaikaのユーザーの方に初めてリアルでお会いできた!
— nodaguti (@nodaguti) 2015年7月29日
まとめ
- 面接では緊張で論理が破綻していたり内容がまとまっていなかったりとだいぶアレな感じだったが,なんとか通った.
- やはり自分の得意分野で直球勝負することが大事かも.
- インターンが終わる頃にまた様子について書きたいと思います.
インターンシップの応募にお祈りされた原因を分析した (Microsoft, はてな, Yahoo! Japan)
これは以下の記事の派生記事です.
選考に落ちた企業について,その原因を探ってみたいと思います.今後応募される方の参考になれば.
Microsoft
MSR (Microsoft Research) ではなく MSD (Microsoft Development) の方です.書類選考で落とされました.
提出物
- 履歴書 (日本語): A4 1枚
- 履歴書 (英語): A4 1枚
- プログラミング経験とプロジェクト内容をまとめたドキュメント: A4 3枚以内
所感
マイクロソフト、アビームのインターン選考。ES通過!(マイクロソフトはテクニカルスクリーニングで落選) : 就活奮闘記
には,
学歴フィルターかと思ったが、同じ大学の同期で落とされた人もいたので、ある程度大きなプロジェクトを作っていれば通過したのではないか、という結論。
と書かれていたので,chaika の開発もしているし書類選考は通るだろうと高をくくっていました.
しかしながら書類審査で見事に落選.原因として考えられるのは,
- 英語の履歴書が適当すぎた.
- プロジェクトについてのアピールは専用のドキュメントがあるし書かなくていいかなーと思って省いた結果,スッカスカの履歴書になってしまった.
- プロジェクトの中から1つ選んで詳しく説明する必要があるのだが,そこで ESChat を選んでしまった.
- 「プロジェクトの目的」「工夫した部分」などが chaika だと書きにくいと感じたからだが,結果的にあまり大規模なプログラムでないものを選択してしまった.
あたりかなと考えています.
はてな
はてなは書類選考のみで合否が決まります.東京在住の自分にとっては,京都観光もできるし,はてなは界隈では有名ということもあってかなり志望度は高かったものの,残念ながら落選.
通知メールには「最終選考まで残った」旨が書かれていましたが,
はてなインターン、最終選考まで残ったって書いてあるけどこれ全員同じですよね多分
— icchy (@icchyr) 2015年7月9日
という見方も当たらずとも遠からずな気がします.
提出物
Google のフォームを使った応募画面でした.
これまでの制作物や研究内容などをまとめたポートフォリオのほか,「言語経験」「担当したいサービス」などを記入する小設問があったように記憶しています.
所感
これは純粋に「宿泊費を負担してまで東京からわざわざ呼び寄せてもらえるだけの技術力がなかった」という一点に尽きるかなと思います.
過去のインターン生の Github とかを見てみても,とても敵わないなという方が多いですし,仮に同程度の技術力の人がいて,一方が京都住まいでもう一人が東京だったとしたら,京都の人を選ぶでしょう.特に関西圏でない学生は,京都に住んでいる学生に比べてかなり選考通過のハードルが上がるのではないでしょうか?
はてなの場合は,毎年インターン生に課している事前課題を Github で公開している(2015年度事前課題, 2014年度事前課題) ので,インターン生でなくても腕試し的に解くことができるようになっています.また,事前課題を解くにあたっては上記リポジトリを fork して解答をアップロードするようになっているので,参加者の Github アカウントも探ることができます.このあたりから,はてなインターンに要求される技術力を推察することができるかもしれません.
Yahoo! Japan
フロントエンドばかりではつまらないかなと思い,最近インフラ周り(特にインフラを仮想化するあたり)が盛り上がってきているように感じていたので,そういう方面のインターンに参加してみるのもよい経験になるのではという考えから,あえて「クラウドインフラストラクチャコース」に応募しました.
結果としては,書類選考通過→面接落ち でした.
提出物
- 書類選考
- 学業で力を入れたこと,または研究内容 (500字)
- 一番自信のあるプログラムについて (300字)
- (論文の発表経験がある場合) 論文の概要について (300字)
- 面接
- 履歴書
- (要求はされていないが) ポートフォリオを印刷したものを持って行きました.
所感
面接は終始なごやかな感じでした.しかし,あとでサイバーエージェントの面接を受けた時に気付かされたのですが,Webサービスをサーバー側含めて運用したことのない人間がインフラコースに応募するのは無謀だったようです.
手取り足取り教えてもらおう,という意識ではなく,期間前後を含めて集中的に学びたい!という姿勢でいたつもりだったのですが,やはり未経験ということは大きかったです.面接でも JavaScript でこういうもの作りました! という話がメインになってしまったため,おそらく面接官の内心としては「なんでこいつこのコースに応募してきたんだろう?」という感じだったことでしょう.結果的に甘い気持ちでいた私の落ち度と言えます.
ただ,ポートフォリオを持参したことはかなり好印象だったように思います.
http://www.alperithm.jp/?p=256www.alperithm.jp
の記事でもオススメされている通り,面接時の話の種にもなるので,かなり有効だと思います.
まとめ
- もっと技術力を高めよう.
- 「興味がある」だけでは選考に通らない.実績が伴っている分野のインターンに参加しよう.
P.S.
- 作者: ゲイル・L・マクダウェル,村井 章子
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夏のインターン選考結果および傾向と対策をまとめてみた
今年の夏はインターンの夏にしよう.と思いたち,Web系企業をターゲットにインターンへ応募したので,結果などをまとめてみたいと思います.
応募した企業
辞退した/お祈りされた企業
- Pixiv: SUMMER BOOT CAMP (Github選考), 選考通過, 辞退.
- Microsoft: サマーインターンシップ, 書類選考落ち.
- はてな: サマーインターン はてなブログコース, 選考落ち.
- Yahoo! Japan: 黒帯インターンシップ クラウドインフラストラクチャー, 面接落ち.
参加する企業
- サイバーエージェント: 弟子入り (テクノロジーコース), 9月いっぱい.
- ドワンゴ: 就業型インターンシップ, 10月-12月.
共通の対策
インターン申し込みにあたって,行ったこと.
Github を充実させる
いままでの成果をアピールするために,大学の講義で作ったものや,chaika のアップローダにアップロードしただけのアドオンなど,まだ公開していなかった制作物を全て Github にアップロードしました.
また,それぞれに詳細な README をつけ,どのようなプロダクトなのかを明記するようにしました.事前に Github のアカウントを見ていただけた企業では,「READMEが詳しい」というのが好印象だったようなので,単に公開するだけでなく,簡単にでも README を記載しておくのは重要だと感じました.
ポートフォリオの作成
もともとは はてな のエントリー要件としてポートフォリオを作るという項目があったのがきっかけですが,いままで制作したものを時系列に並べたページを作成し,応募フォームに URL を書き込んだり,面接時に印刷して持っていったりしました.
- 口頭でいろいろ紹介するよりも端的に,かつ分かりやすく示せる.
- 文書ならば,事前に内容をじっくり推敲できる.
- 面接時に話の種になる.
など多くのメリットがあるため,仮に求められていなくても作成しておくことをお勧めします.
内容としては,公開できない部分もあるのでスクリーンショットになりますが,大体以下のような感じのもので,プロダクト名,関連する画像,概要,工夫した点,公開場所,ダウンロード数などをまとめています.
集合知の検索
とりあえず「企業名 インターン」などでググると情報が出てくるので,参考にしました.
詳細
以下の2ページに,個々の企業ごとに詳細をまとめています.
最後に
身の程知らずにも Amazon の Wish List を作成してみましたのでご参考まで.
この夏は充実した夏休みになりそうです!
サイバーエージェント様とドワンゴ様,どうぞよろしくお願いいたします.
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ポートフォリオをつくろう!―新しい自己PRのための「編集デザイン」
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プログラムからFirefoxのScratchpadでファイルを開き、適切にシンタックスハイライトをするには
Firefox のアドオンにおいて、Atom や Sublime Text のように plain text な設定ファイルをメニューから開けるようにするにはどのような方法が考えられるでしょうか。
nsIFile#launch
XPCOM を使って任意のファイルを開くためにまず思いつくのは、nsIFile#launch
を使う方法です。
しかし、これは(おそらく)OS に処理を丸投げしているだけなため、状況や環境によっては問題が生じます。例えば、JSON や XML を開きたい場合、それらがテキストエディタに関連付けられていない環境では、ウェブブラウザで開かれてしまったり、最悪該当アプリケーションがないというエラーが出てしまったりします。
nsIFile#reveal
同じく nsIFile
から、reveal
メソッドを使うという方法も考えられます。これは、ファイルに対して用いるとそのファイルを内包しているフォルダを開くという動作になります(Mac における Reveal in Finder のような機能)。
launch
を使うよりはまだマシですが、結局 JSON や XML の取り扱いに関する知識をユーザーに求めるという点においてあまりよい方法とは言えないでしょう。
nsIProcess
nsIProcess
を利用して、エディタを指定したうえでファイルを開くという方法もあります。
この方法では、Mac/Windows/Linuxでデフォルトのエディタを変えなければならず、設定が複雑になるという欠点があります。
しかし、設定画面を作ることでユーザーが使い慣れたエディタを指定できるようにするなどの機能を提供できるという利点もあるため、ファイルをエディタで開くという動作が多くあるようなアドオンでは検討に値するかもしれません。
Scratchpad
Firefox には Scratchpad という CodeMirror ベースのエディタが内蔵されています。
しかしながら、開発者がどのように Scratchpad を使ったらよいかについての解説は MDN に書かれているものの、プログラムからどのように操作できるのかという点についてはドキュメントが全く存在しません。せっかく内蔵しているのにもったいない…
というわけで、本体のコードを読み解くことで判明した利用方法は以下の通りです。
let fileToOpen = ...; // nsIFile let { ScratchpadManager } = Cu.import('resource:///modules/devtools/scratchpad-manager.jsm', {}); let win = ScratchpadManager.openScratchpad(); win.addEventListener('load', () => { win.Scratchpad.addObserver({ onReady: () => { win.Scratchpad.removeObserver(this); win.Scratchpad.importFromFile(fileToOpen, false, () => { win.Scratchpad.editor.setMode({ name: 'xml' }); }); } }); });
まず、resource:///modules/devtools/scratchpad-manager.jsm にて定義されている ScratchpadManager を読み込みます。
そして、openScratchpad
メソッドにより Scratchpad を開きます。このメソッドは aState
という Optional な引数をとり、初期化時のパラメータを渡すことができるようです。おそらく、Firefox の起動時に前回 Scratchpad で開いていたファイルを復元するために使われているのだと思われます。しかし、ファイル名、ファイルの内容(テキスト)、実行コンテキスト(Content or Browser)を渡せるのみであり、今回の用途には適しませんでした。
ウィンドウの読み込みを待った後は、エディタの初期化を待つ必要があります。これには Scratchpad.addObserver
を用います。初期化が完了すると onReady
が呼ばれます。
最後に、ファイルを読み込むためには Scratchpad.importFromFile(aFile, aSilent, aCallback)
を用います。aFile
は読み込むファイルを、aSilent
は読み込み失敗時にエラーを表示するかどうかを、aCallback
は読み込みが完了した時に呼ばれるコールバックを指定します。
JavaScript を読み込む分には aCallback
を無指定にして読みこめば完了ですが、(Scratchpad は JavaScript 専用エディタのようにできているにも関わらず)他のタイプのファイルを読み込むことも可能であり、その場合はシンタックスハイライトを適切に設定しなくてはいけません。具体的には上の win.Scratchpad.editor.setMode({ name: 'xml' });
の部分がそれです。
エディタの設定は Scratchpad.editor
(実体は devtools/sourceeditor/editor.js)からいろいろできるっぽく(あまり調べていない)、いじってみるとなにかおもしろいことができそうな雰囲気がします。ちなみに、editor.js には xml
というモードは定義されていませんが、指定してみたら動作しました :)
まとめ
- テキストファイルを開くなら nsIProcess か Scratchpad
- Scratchpad を外部からいろいろやるとおもしろそう
Components.utils.import でグローバル汚染を引き起こさずにインポートする方法
Firefox 本体ではおそらくだいぶ前から使われているだろうから今更感あるし、2015年にもなって Mozilla-specific な JavaScript の記事に需要があるのかはわからないけれど、先ほどとあるコードモジュールを読んでいて知見を得たので共有します。
Components.utils.import は第2引数に何も指定しない場合、コードが書かれているスコープではなく、グローバルスコープに指定したモジュールを展開します。そのため、せっかく以下のように Module Pattern を使って書いていたとしても、グローバル汚染が引き起こされます。
(function(global){ "use strict"; Components.utils.import("resource://my-module/Hoge.jsm"); // do something })((this || 0).self || global); Hoge === undefined; // -> false
しかしながら、第2引数に名前空間を指定して、モジュールに対しては常にその名前空間を介してアクセスするというのもコードが無駄に冗長になり、つらみが高まります。
let Modules = {}; Components.utils.import("resource://my-module/Hoge.jsm", Modules); Modules.Hoge.foo(); if(Modules.Hoge.bar()){ // do something }
そこで有効なのが、Components.utils.import
がモジュールのグローバルオブジェクトを返すということを利用し、空のオブジェクトをスコープとして渡した上で、返り値をローカル変数で受ける方法です。Object destructuring を用いることでかなり簡潔に書くことができます。
let { Hoge } = Components.utils.import("resource://my-module/Hoge.jsm", {});
返り値の利用は非推奨(use of the return value is discouraged)と MDN に書かれているのが若干気になるところですが、Firefox 本体にも多く使われているテクニックなので恐らく大丈夫でしょう。
(追記 2015/5/16 18:00) id:Syoichi さまのご指摘に基づき、Object destructuring と Shorthand Properties を誤解していたことが判明したため、上記最後の部分を修正。元文章は以下の通り。
let { Hoge: Hoge } = Components.utils.import("resource://my-module/Hoge.jsm", {});
返り値の利用は非推奨(use of the return value is discouraged)と MDN に書かれているのが若干気になるところですが、Firefox 本体にも多く使われているテクニックなので恐らく大丈夫でしょう。
さらに、Firefox 33 以降であれば Shorthand Properties が使えるので、上記はより簡潔に
let { Hoge } = Components.utils.import("resource://my-module/Hoge.jsm", {});
と書くことができます。
STAP記者会見の最後で相澤チームリーダーが言いたかったこと
今日10:30から行われていた「理化学研究所 STAP現象の検証結果に関する記者会見 生中継」をニコ生で見ていた。
一般紙の記者は、誤解を恐れずに言うと「一般人的」あるいは「文系」的な質問をするのに対し、相澤チームリーダーや丹羽副チームリーダーはあくまで科学者として科学の発想で以って回答をしていたので、話が若干噛み合っていないのが辛そうだった。
どちらにとっても互いに互いの話の筋が通っていないように思えるという疲労度の高い記者会見だったのではないかと思う。
記者会見の終了が宣言されたのち、一旦会場を去りかけた相澤チームリーダーが戻ってきて、印象的な発言をしていた。その内容とは、以下に書き起こしてみると、大体以下のようなものであった:
(今回の)検証実験、特に小保方さんの検証実験を、このようにモニターをおいたり立会人をおいたりして行うというのは科学のやり方ではないと思っている。
科学のことは科学のやり方で処理しなければいけないので、そういうふうな検証実験をしてしまったことに対して、検証実験の責任者としてものすごい責任を感じている。
今後なにかあるたびにこのように犯罪人のような扱いをしたうえで科学の行為を検証するということは、科学にあってはならないことだと思っている。
このことに関しては、検証実験責任者として、深くお詫びを申し上げると共に、責任を痛感している。
(上記ニコ生 2:13:10 付近より)
このことに関して、ニコ生のコメントでは理解できないと言ったようなコメントも複数見受けられたが、これは上の考え方が科学界特有の考え方だからであろう。そのことについて自分なりの解釈を書いてみたいと思う。(書いていてなんだか社説みたいになってしまった…)
科学において「正しい」とはなにか?
(論文の正しさの度合い)
[正しくない]|||||||||||||||||||||[中立]|||||||||||||||||||||[正しい]
科学では、論文を発表した段階では基本的に「中立」として扱われる。つまり、正しいとも正しくないとも言えない、ということである。
ただ、一般的に完全に「中立」から始まるというとそうではなく、若干「正しい」よりになることも多い。なぜならば、
- 丹羽副チームリーダーも話していたように科学が基本的に性善説で成り立っている
- 一定水準以上の査読付き論文誌に掲載された論文ならば、それなりに信憑性があるものと考えられる
からだ。つまり、初めから信頼度の高い方法で発表された論文は、正しさの尺度の中で、スタートが「正しい」寄りになるということである。STAP細胞の場合には、権威ある Nature 誌に掲載されたことで、だいぶ「正しい」度合いが高い状態で発表されたと言える。
そののち、世界各地の研究者が追試、すなわち再現実験を行ってみて、複数回成功すれば論文の内容が正しい可能性が非常に高くなる(「定説」になる)し、失敗報告が相次げば「正しくない」として、研究内容は信頼を失うことになるし、場合によっては研究者自身の信頼性も揺らぐかもしれない。
すなわち、再現実験がどれだけ成功したかで論文の信頼性、信憑性が判断されるし、逆にそれ以外では判断されないものなのである(捏造の場合にも再現性がないことから信頼性がなくなると考えられる)。
(このあたりの話は「99.9%は仮説」にある「グレースケールの尺度」の話がわかりやすい)
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今回の検証実験は必要なかった
相澤リーダーはそこまで踏み込まなかったが、相澤リーダーは今回のような検証実験を行う必要はなかった、行うべきではなかったと考えているのではないか、と個人的には推測している。
STAP細胞の論文は、論文発表後に世界中の研究者が再現できなかった時点で、その信頼性は全くなくなっている。つまり、科学界においては、本検証実験を始める前の段階ですでに、論文に書かれた方法で作成でき、かつ論文に書かれたような性質を示すような「STAP細胞」は存在しない、ということは誰の目にも明らかであった。
相澤リーダーが言っていることは、そのように科学界では「STAP細胞」が存在しないことは明らかであるのに、監視下で「再現実験」なるものを行うのは、単なる見せしめ、世論を満足させるためのショーであって、科学でも何でもないということなのだろう。
たしかに、多額の税金を投入し、あたかも再生医療における革新的発見であるかのように大々的に宣伝したことに対する罪滅ぼし、禊のような役割として本検証実験は必要であったかもしれない。しかし、相澤リーダーは一科学者として、このような科学に反する実験を行ったことに対して、科学界へ一言謝罪を言わずにはいられなかったのだと思う。
科学の世界は俗世から離れている
このような考え方は、部下が問題を起こしたら上司が責任を取って辞めるといった考えとは真っ向から反するものである。つまり、一般社会と科学界では発想、考え方が全く違うのである。マスコミは一般社会の考え方で記事を書き、科学者は科学界の考え方で発言をする。
「STAP細胞はあるのかないのか?」という質問に対して歯切れが悪い科学者に苛つくのと同様、本発言もなかなか理解しにくいものかもしれない(「捨て台詞」といった解釈をしたコメントもあった)。
しかし、「発想が違う」から「その考え方は正しい」のか?というとこれもまた難しい問題であり、必ずしもそうとは言えないだろう。互いに相互理解をするためには歩み寄りが必要だが、科学界は専門用語が飛び交う場でもあるのでなかなか溝は埋まりにくいと思う。
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